ゆるふわおぎゃり系おじさんの冒険

3人の大人のアウトドア生活を記録していきます。登山、キャンプ、ロードバイク、バンド、その他などなど。

テントサウナでほぼイキかけた話

 今週もずいぶん長く感じた。学生の頃は長期休暇と言えばそれこそ1ヶ月や2ヶ月という認識だったのだが、社会人になるとそれが途端に数日間になる。エンジェルフォールも裸足で逃げ出す落差だ。会社に入りたての頃はそれこそそのギャップに面食らってしまったものだが、今となっては慣れてしまって、むしろ1ヶ月など休もうものなら恐らく社会復帰は不可能になるほど堕落するに違いない。それを証明するように、9日間のゴールデンウィークが明けてしばらくたつのに、僕の頭はまだ怪我から復帰開けのスポーツ選手のようにおっかなびっくり動いているままである。加えてこのご時世の自粛要請も相まって、余計に錆みたいな怠さが体に纏わり付いている。外に出られるのに敢えてだらけるのと、否応なくそうするのでは、身体の反応は変わってくるのだ。しかし、午前9時から始まる一限目どころか午後からの講義にも寝坊していたどうしようもない僕からすれば、驚くべき進歩ではあるだろう。

 さて、そんなものだから、普段通り働いて、なおかつ終業後にホームジムにてウェイトトレーニングも行っていては、金曜の夜には定時で帰ってリフレッシュしたいと思うのが人として当然の性であろう。にもかかわらず、終業のベルが鳴ってもオフィスのデスクでタスクに追われていたのだから、僕の心はキツく締め上げられて歪む寸前だったのは言うまでもない。

 結局仕事を終えたのは19時を過ぎたあたり。華金の僕が求めているのはうまい飯でも安らかな睡眠でも、プライムビデオでのんびり見るスタローンやステイサムの血なまぐさい肉体美でも、笑ってしまうくらいハードな筋トレでも、当然飲み会でもない。サウナだ。

 

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 という訳で終業後にプロテインを一気飲みしつつ向かったのは、先日緊急事態宣言の解除を受けて営業再開をした、東静岡駅からほど近い松之湯だ。ここは営業自粛前も割と頻繁に通ってはいて、それこそこの温泉が天神の湯と名乗っていた時から慣れ親しんではいるのだが、この日の僕にはいつもとは違う目的があった。テントサウナである。

 テントサウナとは、その名の通りサウナストーブがテント内に設置されているものなのだが、セルフでロウリュが出来たり、普通のサウナでは体験できないようなある種不便さのある原始的な熱気を間近で体験できる設備である。

 個人でも購入でき、探すと様々ヒットする。

product.rakuten.co.jp

 しかし購入するには高く、使用場所も限られており、今まで入りたいとは思いつつも、機会がなく歯がゆい思いをしていたのだ。ところが少し前に天神の湯が松之湯にリニューアルしたタイミングでこのテントサウナが設置されたと言うではないか。

 そうして僕はここに何度か訪れたのだが、遅い時間であったり雨天であったりとタイミングが合わず、結局体験出来ずに営業停止、歯がゆい思いだけが募っていく日々を過ごしていたというわけだ。

 前置きがずいぶん長くなってしまったが、ようやく今回、天気も時間も申し分ないタイミングで、このテントサウナとご対面出来るというわけだ。

 車を駐車場に泊め、受付を済ます。この松之湯は、カプセルホテルも兼ねていて、かつ小学生以下が入場できないためいつも比較的静かであり、風呂に入る前からある程度リラックスが出来る。脱衣所で服を脱ぎ、入り口の自動ドアを抜けると左手側に露天風呂が見えた。その奥にチン座、もとい鎮座しているのが、テントサウナである。

 テントサウナ自体は二つあるのだが、どうやら今日稼働しているのはそのうちの一つだけのようだった。近づいてみると、受付表に名前を記入し、順番が来れば呼ばれるシステムだそうで、僕はすぐに記名した。聞くと、1セット十分で、同時に入ることが出来る人数は2名から3名ほどとのこと。今セットが始まったばかりなので、準備等含めてあと十二、三分ほどで僕の番が来るとのこと。こうしてはいられない。急いで身体を清めなければ。すぐに洗い場へ向かい、頭と身体を素早くかつ念入りに洗う。普段ならこの後炭酸泉で身体を少し温め、高温のロッキーサウナへ向かうところだが、今回はウォータークーラーで水分補給をした後すぐに露天風呂へと足を向けた。天然温泉の露天風呂につかりながら、その時を待つ。映画館でCMを見ているときのような気分だ。僕が風呂の縁に腰掛けて肩周りのストレッチをしていると、ついに名前を呼ばれた。少し慌て気味にテントサウナへ向かう。どうやらこのセットは二人のようだ。僕と一緒に入るのは、白髪の目立つ初老のおじさんだった。ベンチに腰掛けていたおじさんが先にテントの中へ、続いて僕も少し腰をかがめて中へ入る。ソリッドスネークにでもなったかのような気分だ。中は思っていた以上に狭く、サウナストーブの目の前に二段掛けのベンチがあり、その下あたりにアロマ水が入ったバケツが2つおいてあった。話し合いの結果、熱いのがそれほど得意ではないというおじさんが下に、僕は上に座った。なんとなくだが、この狭さでは僕が入るとあと二人は難しいのではないかと思った。

 程なくして、テントの入り口が閉まった。五分と十分で、係の人がコールしてくれるそうだ。もうすでにかなり熱い。これは過酷な戦いになると、すぐに悟った。このご時世、狭く熱気渦巻くテントに裸のおっさんと三密の役満。時代に逆行どころか真っ先に戦いを挑む、まさにランボー怒りの脱出状態。そして既に我らは脱水状態。汗がどっとあふれ出てくる。時計もないので今何分経過したのか全くわからない。まあ仮にあっても僕は目が悪いのでほとんど見えないだろうけれど。

「結構熱いですね。僕、テントサウナ初めてなので、どうぞお好きにロウリュしてください」

 どうにもロウリュが気になっていた僕は、下でうつむくおじさんにそう声をかけた。

「いや、実は私も初めてで。かなり熱いですね。では、少しかけてみます」

 おじさんは少し迷ったような、困惑したような声でそう返し、恐る恐るといった様子でひしゃくからアロマ水をサウナストーンに落としていった。途端に熱せられた石から蒸気が吹き上がる。同時に強い熱波が全身を包んだ。思い出すのはサウナしきじの薬草サウナだ。身体から水分が吹き出てくるのがわかり、僕は思わず少しのけぞった。後頭部がテントに当たり、柔らかな感触が返ってくるのが、少しおかしかった。

 しばらくして係の人が五分経過を告げた。まだ五分、もう五分、僕にはどちらか判別出来なかった。そうだ、僕もロウリュをやってみよう。おじさんに許可を取り、ひしゃくを手にした。アロマ水をすくい、サウナストーンにかけていく。音を立てて再び蒸気がテント内をゆっくり満たしていく。体感温度はさらに上昇し、早く十分経過してくれという身体からの悲鳴が少しずつ大きくなっていく。今何分なのだろう、最後の方はそんなことばかり考えていたような気がする。とにかく熱い、だが、不思議と心地よく、出たくない。だが出たい。出て水を飲み、水につかりたい。そんな思いがせめぎ合う。多分おじさんもそう思っているに違いない。

 そしてようやく、あっという間の十分が終わった。入り口が開かれ、おじさんが真っ先に飛び出していく。僕も後を追い、水風呂へ一直線だ。松之湯の水風呂は縦長の一人用檜風呂が三つというものなのだが、埋まっていないことを心から祈りつつ向かう。よかった、空いている。僕はウォータークーラーで水分を摂り、手桶で水をすくい全身の汗を流した後、水風呂へつかった。気持ちいい。水温は18度強くらい。檜の匂いが身体に落ち着きを与えてくれる。オーバーヒート寸前の火照りきった身体が、どんどん冷却されていく。最高だ。

 しばらくして水風呂から上がり、身体をよく拭きつつ外気浴へ向かう。もうこの時点でいつもとは違った。既に整いかけているのだ。そのことに驚きながら、僕はテントサウナの傍らにあるデッキチェアに身を横たえた。外気は20度を超えているくらいだろうか。だか感じる温度はそれ以上に温かい。全身の脈動が聞こえてくる。そして身体が溶け出すようなあの感覚。なんと言うことだ、通常なら三回サウナに入った後にやってくる瞬間が、さらに磨きをかけて一回目にやってきてしまった。テントサウナ、恐るべし、である。

 その後はたっぷり休息をとった後、いつもの通りロッキーサウナと水風呂、休憩のセットを繰り返し、炭酸泉にゆっくり浸かった後、再度身体を入念に洗い、大浴場のあつ湯で調整して終了した。

 心地よい疲労感に包まれて、車で帰路につく。窓を開けると金曜の夜風が僕をすき家へと誘っていた。

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明太高菜牛丼特盛りアサリの味噌汁お新香セット

 さすがにダイエットを決意した身では、ということで、控えめに食事をとった。ごちそうさまでした。